石積み学校をふりかえる。
江田集落
3月11日、12日の2日間、江田集落で石積み学校を開催いたしました!
講師には、町内で土建業を営む「司建工」の真淵清善さん、森下さんをお呼びし、
町内外18名の参加者と一緒に、石積みの基礎からご教授いただきました。
2日間の動きを簡単にまとめたいと思います。
<石積み学校ってなに?>
棚田や段々畑の景観が中山間の魅力として注目されてきてます。その暮らしを支えているのが石積みです。その昔、「石屋」という仕事もあるぐらい石積みは身近な存在でしたが高齢化に伴い、技術を持つ人たちが減少してきています。過疎化も進む中、修復する担い手も不足しているのが現状です。そこで「石積みの技術を持つ人」「石積みを習いたい人」「石積みを直してほしい人(場所)」の三方をマッチングし、修復が必要な田畑を教室にして技術の伝承を行う活動が「石積み学校」となります。
<講師は?>
(上:真淵さん 下:森下さん)
地元神山で長年土建業を営む「司建工」にお勤めの真淵清善さん。社長の森下さんも現場にてアドバイスをしていただきました。神山町でも、石積みの技術を伝承する方が数人しかおらず、そのうち昔から「石屋(石を積むことを仕事とする」として代々継がれてきた真淵さんにお願いをしました。18歳から現在まで約60年間石を積んでこられたそうです(すごい)
<なぜ江田集落?>
一つの理由は「棚田」という風景が受け継がれていること。コンクリートで慣らした石積みも見受けられますが、基本は空石積みが多く残り、石積みと暮らしの関係性を一目で感じてもらえる場所だと思い教室としました。
<技術の継承?体験?>
石積み学校本来の目的は、石積みは難しいという概念を少し和らげることが一つ。
例えば家の裏にある石積みが膨らんできて(土砂が流れること)修復したい!と思った時に、一人の受講者が少人数参加者を募り、自分たちで直せるぐらいの技術(同時に伝える)を備えてほしいというのが狙いです。
一方で、職人さんが築いてきた時間にも触れることができます。後を受け継ぐ人がいない現状。真淵さんという職人さんから学んだことを次に伝えていかないと、石積みは直すことが困難になり、神山の風景は途絶えてしまうかもしれません。
参加者が石積み学校に求める目的は人それぞれですが、自分が住む地域ごとを考える場になってほしいというのは、僕個人の想いとなります。
<石積みを体験した感想>
楽しかったというのは、安易な表現かもしれませんが僕自身は暮らしに直結する技術なので大変役立ちました。馬淵さんからすれば、飯事かもしれませんが…でも、根気詰まって方苦しくやるよりも、楽しかったと思える場は長続きすると思います。
目的は人それぞれ。
「家の石垣を直したい」「石積みに興味がある」「真淵さんの技術をこの目で見たい!」
”自分ごと”として、石積みをどう見ることができるかがポイントじゃないでしょうか。
馬淵さんは職人肌で、時に大変厳しい口調で教えてくださりましたが、それも石を積んで60年の経験が成すこと。僕らも一回きりのイベントではなく、次にまた次にと繋いでいきたいです。
<先を見つめること>
石を積むとき、師匠が多く口にしていた言葉が「積む先を考えなさい」。
角度(45℃が目安)をつけたり、3点に接し(荷重)たり、重心を置くにかける(すぐにグリを入れる)、石の顔(面)を見極めるなど、積むに至るまで考えることはたくさんありますが、まずは【石の形を見極め、置いたらどんな設置面ができ次にどんな石が置けるか】をイメージすることが大切だと認識しています。
石積みに限らず、今の仕事や田んぼ仕事にも通ずることだと思い、意識して心がけていきたいと思います。
<技術を知る>
「玄翁の使い方がなっとらん!」「石の顔をよく見ろ」「角度をつけとらん」
初めて作業する方には、理解するまで時間がかかることかもしれません。当たり前ですが、師匠が積み重ねて来た技術や知識を2日間で理解するなんて難しいこと。しかし、一つ一つの作業において小さな詰めをしっかりこなすことは、大切な技術。仮に師匠がいなく、僕らだけで作業してしまってたら、”なんとなく”で作業を進め、至る所に”甘さ”が残る結果になっていたでしょう。どちらの過程も一つの結果ですが、馬淵さんがいることで学べる時間は間違いなくあるはずです。近くで、見聞きすると本当に学べることがたくさんある。たった1時間接するだけで、向こう何十年続く技術や知恵を拝受できることは贅沢な時間だと思います。
<個ではない、人と人が交わり生まれる風景>
今回、スタッフ入れて18名の参加者が10M程の範囲でともに作業しました。
狭い敷地で作業をおこなうため、自然と掛け声が生まれ、知らないもの同士、住む場所も年齢も違う中でも「お願い」をする時間が生まれます。この共同作業こそ、僕が大切にしている田舎の良さです。江田集落の活動では、なるべく多くの”手(手間)”をかけて作業することを意識しているので、とても有意義な時間となりました。
<次の100年はどんな景色になるのか>
「今活動していることは、未来へのメッセージ」
2日間で積んだ石積みは、今後50〜100年は崩れることなく江田集落の景色を見続けることになると思います(そうなってほしい)。
あと何年この集落が維持できるかわかりません。消滅していくことも一つの選択肢かもしれません。一方で、人と場所をつなぐ意味では、このような取り組みを通じ集落を知るきっかけは生まれているはずです。
集落がどのように次の世代へバトンタッチしていけるのか。
様々なアプローチから”選択肢”を考えていきたいです(個人的な思い)。
最後に。
終わり際、真淵さんにお礼を伝えにいった時に頂いた言葉が二つあります。
「これを続けることが大切じゃ」「今日の参加者で2人はもう石積みができるだろう」
真淵さんにとっては、お飯事みたいなイベントで血圧もさぞ高くなってしまったと思いますが、しっかりと継続することの重要性をお話しくださったのは嬉しいことでした。
それ以上に、参加者を見て、自分の思いが伝わったという人が2人いたことにどのような思いがあったか(聞いてみたいが、ここは真淵さんの胸の内に留めておきます)。微笑みながらそう語ってくれた真淵さんをみて、少しホッとした自分がいました。
新しい価値は、僕らが知らなかった”既存の価値”の組み合わせ。
僕は90年代以降の社会しか知らない若者です。昔の文化は徳島来るまで知らなかったことばかり。いわば、ここにきて初めて知る”新しい価値”です。石積みという”地域の文化”と、多くの手を加え物事を生み出していく”集落のあり方”を掛け合わせたものだと思います。
今回イベント実施にあたり、お世話になった多くの関係者、参加者の皆さん本当にありがとうございました。
また、みんなで石を積みましょう!
菜の花も8分咲き!菜の花祭りは3月26日(日)です。
神山町地域おこし協力隊 / 植田 彰弘
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